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ECサイトでお客様が購入を決定する申込画面では、表示しなければならない事項があるということですが、どういった事項をどのように表示したらよいでしょうか。

Answer

ECサイト上、消費者が商品の購入を決め、販売事業者に申込み情報を送信する画面(以下「最終確認画面」といいます。)では、特定商取引に関する法律(以下「特商法」といいます。)に基づく表示を行わなければなりません(こちらのコラムでも触れています。)。

もっとも、同法は、消費者の誤解を防ぐという観点から、表示してはいけないことについても定めています。そこで、ECサイトにおいて、最終確認画面ではどのような表示をすべきか又はしてはいけないのか、ご説明します。

1 表示が必要な事項について
(1)どのような表示が必要か

最終確認画面では、申込みの際に、消費者に対して、次の事項を表示しなければなりません。他方で、表示に使用できるスペースは、ウェブサイトや消費者の使用する端末によって様々です。そのため、③から⑥については、いずれの事項について記載したものかを明記したリンクを設置して、リンク先で具体的に表示することも可能です。

  1. ①販売する商品の分量(個数、回数、期間等)
  2. ②販売する商品の価格(送料別の場合は、販売価格及び商品の送料)
  3. ③代金の支払時期及び方法
  4. ④商品の引渡時期、権利の移転時期又はサービス提供の時期
  5. ⑤申込期限がある場合は、その旨と期限
  6. ⑥キャンセル・返品に関する特約がある場合は当該特約
(2)①販売する商品の分量(個数、回数、期間等)について

提供する内容がサブスクリプションの場合については、役務の提供期間や、期間内に利用可能な回数が定められている場合にはその内容を表示しなければなりません。さらに、消費者が解約を申し出るまで定期的に商品の引渡しがなされる無期限の契約や無期限のサブスクリプションの場合には、その旨を明確に表示する必要があり、また、この場合には、あくまでも目安にすぎないことを明確にした上で、1年単位の総分量など、一定期間を区切った分量を目安として明示することが望ましいとされています。同様に、自動更新のある契約である場合には、その旨も加えて表示する必要があるともされていますので、これらの点についても留意が必要です。

(3)②販売する商品の価格(送料別の場合は、販売価格及び商品の送料)について

サブスクリプションにおいて見受けられるような、無償又は割引価格で利用できる期間を経て当該期間経過後に有償又は通常価格の契約内容に自動的に移行するような場合には、有償契約又は通常価格への移行時期及びその支払うこととなる金額が明確に把握できるようにあらかじめ表示する必要があります。

(4)③代金の支払時期及び方法について

ア 代金の支払時期について

代金の支払時期とは、消費者が商品等を購入する場合に代金を支払う時期をいいます。

特に金融機関、コンビニエンスストア等で振込や支払手続を行う必要がある場合には、前払い又は後払いのいずれであるかを明示し、いつまでに支払を済ませる必要があるのか、具体的な時期も表示する必要があります。

イ 代金の支払方法について

銀行振込、クレジット、代金引換、現地決済等の支払方法の別を全て表示することが必要です。ほかの支払方法があるにもかかわらず、一部のみ記載することはできません。

(5)④商品の引渡時期、権利の移転時期又はサービス提供の時期について

商品の引渡時期とは、消費者から注文を受けた後に、商品が消費者の元に届く時期をいい、期間又は期限を表示することが必要です。特に前払式の通信販売の場合には、申し込んでからいつまでに商品が引渡されるか分からないと購入者も困りますので、明確な表示となるよう注意してください。

(6)⑤申込期限がある場合は、その旨と期限について

虚偽の申込期間の表示を行い、商品が期間経過後に購入できなくなると消費者を誤解させるような不当な表示を防止するため、申込期間は正しく表示する必要があります。

ここでいう「申込期間」は、商品の販売等自体に期限を設定する場合(購入期限のカウントダウンや期間限定販売など、限られた期間を過ぎると消費者が商品自体を購入できなくなるもの)をいいます。

(7)⑥キャンセル・返品に関する特約がある場合は当該特約について

解約方法を特定の手段に限定する場合、とりわけ、消費者が想定しないような限定がなされる場合や、解約受付を特定の時間帯に限定している、消費者が申込みをした際の手段に照らして当該消費者が容易に手続を行うことができると考えられる手段での解約連絡を受け付けない等の場合には、当該内容については、特に消費者が明確に認識できるよう、リンク先や参照ページの表示に委ねるのではなく、広告画面はもとより、最終確認画面においても明確に表示することが必要であるとされていますので、注意が必要です。

2 表示が禁止される事項について
(1)注文内容や契約の申込手続に関して、消費者を誤認させる表示

特商法第12条の6第2項第1号は、消費者が、最終確認画面で行う一定の操作(ボタンのクリック等)によって、有償の契約を申込むことになることをはっきり理解できないような表示を禁止しています。

例えば、最終確認画面で、クリックすると消費者が契約を申込むことになるボタンに、「●●のプレゼントを受け取る」、「××キャンペーンに参加する」、「次へ」等と記載するような場合です。このような表示は、消費者を誤認させるものとして禁止されています。

他方で、例えば、「申込みを確定します」等、クリックすれば申込みとなることが容易に理解できる表示であれば誤解は生じないと考えられます。

なお、クリックすることで申込みとなるボタンに、単に「送信する」とだけ記載している場合は、契約を申込むことになることについて明らかとはいえないと考えられています。この場合も消費者を誤解させる場合にあたる可能性がありますので、ご注意ください。

(2)上記①から⑥までの表示事項について、人を誤解させるような表示

特商法第12条の6第2項第2号は、最終確認画面で表示する各事項が、虚偽ではないものの、誤解を招くような表示とすることを禁止しています。「誤解を招く」がどうかは、の表示事項の表示それ自体並びにこれらが記載されている表示の位置、形式、大きさ及び色調等を総合的に考慮して判断することとされています。

例えば、定期購入契約において、最初に引き渡す商品等の分量やその販売価格を強調して表示し、その他の定期購入契約に関する条件を、それに比べて小さな文字で表示することや離れた位置に表示していることなどによって、引渡時期や分量等の表示が定期購入契約ではないと誤認させるような場合には、「誤解を招く」と評価されるおそれがあるとされています。

 

これらの表示については、消費者庁においてガイドラインを公表しています。このガイドラインにおいては、具体的な表示の例を挙げて、法令違反となるリスクがある表示や許容される表示が示されていますので、実務において参考にするとよいでしょう。

(「通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン」)

3 まとめ

以上のように、最終確認画面での表示については、消費者の最終的な意思決定がなされる場面ということもあり、事業者は、取引に関する正確な情報を提供することが求められています。

他方で、多数の商品ページに全て、上記①~⑥を表示することは、ECサイトの規模が大きいほど難しくなります。

実務的には、最終確認画面での表示事項のうち、共通事項をまとめた共通ページへの誘導を行ったり、いわゆるインデックスタブを設置して消費者が適宜参照できるようにしたりして対応するケースも多いようです。

自社ECサイトの管理にかけられるコストの範囲で、適切な表示を行うための検討・工夫が必要となるように思います。