企業法務全般

当社は、BtoB取引を行っている顧客から、不良品であったことを理由に納品した製品代金の減額を求められました。顧客に納品した製品は、当社の下請会社に製造を発注したものだったので、下請会社に代金の減額を…

Question

当社は、BtoB取引を行っている顧客から、不良品であったことを理由に納品した製品代金の減額を求められました。顧客に納品した製品は、当社の下請会社に製造を発注したものだったので、下請会社に代金の減額を求めたいのですが、その場合に気を付けるポイントはありますか?

 

Answer

1. はじめに

下請先に支払金額の減額を求める場合、下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」といいます。)で禁止される下請代金の減額にあたらないようにする必要があります。下請法に違反するとして貴社が公正取引委員会の勧告対象となった場合、同庁から企業名及び違反内容が報道資料とともに公表されるため、貴社のレピュテーションリスクとなり得ます。

※(参考)公正取引委員会下請法勧告一覧

2. 製造・販売契約への下請法の適用

貴社が締結した製造・販売契約が次の3つの要件を満たす場合は、下請法が適用されます。

  1. 締結した契約が製造委託契約であること
  2. 委託者が親事業者に該当すること
  3. 受託者が下請事業者に該当すること
(1) ①締結した契約が製造委託契約であること

製造委託とは、委託者が規格、仕様等を定めて完成品又は部品等の製造を委託する内容の取引をいいます(下請法第2条第1項)。自動車メーカーが自動車を製造するのための部品を部品メーカーに委託するような場合が該当します。

受託者は、元請であるか下請であるかは問いませんので、一次請負事業者(元請)が再委託して二次請負事業者(下請)に製造委託するような場合、元請は、発注者との関係では受託者、下請との関係では委託者となります。

(2) ②委託者が親事業者に、③受託者が下請事業者に該当すること

委託者が親事業者に、受託者が下請事業者に該当するかどうかは、委託者の資本金と下請先の資本金により定まります(下請法第2条第7項、第8項)。具体的には、次のいずれかに該当する場合、製造委託契約における親事業者又は下請事業者に該当します。

ア 委託者の資本金が3億円を超える場合で、受託者が資本金3億円以下の法人又は個人事業者の場合

イ 委託者の資本金が3億円以下で、かつ、1千万円を超える場合で、受託者が資本金1千万円以下の法人又は個人事業者の場合

3. 代金減額の禁止

下請法が適用される取引においては、発注時に決定した下請代金を発注後に減額することは、原則として禁止されます。減額が認められるのは、下請事業者の不注意等により製品に不良があった場合などの過失がある場合に限られます(下請法第4条第1項第3号)。

4. 本件について

本件では、まず、貴社と下請会社との取引内容が製品の製造を委託する内容ですので、製造委託契約に該当します(①)。次に、貴社及び貴社の下請会社の資本金の金額を確認し、貴社が親事業者、下請会社が下請事業者に該当しないかについて確認します(②、③)。

これにより、下請法の適用対象となる場合、代金の減額は、納品した製品の不良原因が下請会社の過失による場合に限られます。そのため、代金の減額の可否を検討するためには、製品の不良が生じた原因において、下請会社の過失といえるような不注意があった事実があるかどうかを確認する必要があります。

5. まとめ

以上のとおり、下請法の適用のある取引においては、代金の減額が可能な場合が限られています。また、親事業者に対しては、一定の事項を記載した書面又はデータを発注時に交付しなければならない等、下請法の適用がある取引を行う際のルールが他にもあります。

貴社の取引が下請法に即したものとなるよう、公正取引委員会から公表されている資料を確認していただければと思います。

資料はこちら

なお、貴社が親事業者となる資本金の要件を満たさないため、下請法の適用がない取引であっても、取引相手が個人事業者である場合は、フリーランス保護法が適用される可能性があります。フリーランス保護法の解説は、こちらからご覧いただけます。