企業法務全般

当社は、自社のウェブサイトを管理運営していますが、コーポレートサイトの役割とともに、誰でも視聴できる形で当社事業の業界のニュース映像を配信する機能もあるウェブサイトです。電気通信事業法が改正されたと…

Question

当社は、自社のウェブサイトを管理運営していますが、コーポレートサイトの役割とともに、誰でも視聴できる形で当社事業の業界のニュース映像を配信する機能もあるウェブサイトです。電気通信事業法が改正されたと聞いたのですが、当社も何か対応は必要でしょうか。

 

Answer

誰でも視聴できる、つまり、不特定多数のユーザーに対して映像配信を行っているということですので、令和4年改正電気通信事業法(以下「法」といいます。)に即したクッキーポリシーの作成及び公表が必要となります。
今回は、新たに作成公表義務を負うことがあるクッキーポリシーについて解説します。

1 新たな義務の内容と法が適用される事業者について
(1)クッキーポリシーが公表事項となったことについて

法2条第5号では、電気通信事業について、「電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業」と定義しています。典型的には、携帯電話事業者、インターネットのサービスプロバイダ等が想定されていました。しかし、ウェブサイトやアプリケーションを利用する際、利用者自身が認識していない状態で、利用者の端末から第三者に自身の情報が送信されている場合(外部送信)があります。このような利用者情報に関する外部送信の状況を知る機会を確保し、透明性を高めることが求められるようになり、クッキーポリシーについても作成公表義務が課されることになりました。

(2)クッキーポリシーを作成公表しなければならない事業者とは

ブラウザその他のソフトウェア(スマホ等で利用できるものを含みます。)で利用できる次のようなサービスを提供している事業者は、クッキーポリシーを作成、公表しなければなりません(法施行規則第22条の2の27)。

  1. ①電子メールサービス、ダイレクトメッセージサービス、参加者を限定できるオンライン会議が可能なweb会議システム等コミュニケーションサービス
  2. ②SNS、動画共有サービス、オンラインショッピングモール、ライブストリーミングサービス等プラットフォームサービス
  3. ③オンライン検索エンジンサービス(全ウェブページを対象とする場合)
  4. ④ニュースアプリ、映像配信サイト、天気情報配信サイト、地図サービスアプリ等の情報配信サービス

他方、上記のようなサービスを提供しないウェブサイト、例えば、自社の情報のみを掲載するコーポレートサイトについては、クッキーポリシーの作成、公表は必要ありません。

2 クッキーポリシーの記載事項

クッキーポリシーの作成、公表義務を負う事業者は、法に基づき、①送信される情報、②送信先、③送信される情報の利用目的を作成、公表しなければなりません(法ガイドライン第51条)。これらの記載については、ウェブサイト上で動作する個々のクッキーモジュール毎に記載する必要があります(法ガイドライン解説259頁)。そして、具体的に記載しなければならない内容は次のとおりです。

(1)①について

当該情報送信指令通信が起動させる情報送信機能により送信されることとなる当該利用者に関する情報の内容を記載します。例えば、ウェブサイトを読み込んだ履歴情報、過去どのような物品やサービスを購入したかについての履歴、当該ウェブサイトやサービスへのログインの日時、IPアドレスなどの情報です。
もっとも、記載の方法については、「ウェブサイト閲覧履歴」、「サービス購入履歴」といった簡易的な記載であっても問題ありません(ガイドラインに関するパブリックコメント54頁)。

 (2)②について

送信先は、情報の送信先となる電気通信設備を用いて当該情報を取り扱うこととなる者の氏名又は名称を記載します。ただし、氏名又は名称よりサービス名の方が広く知られているような場合はサービス名等も併記することが望ましいとされています(ガイドライン解説258頁)。

 (3)③について

アプリ等の提供者の利用目的と、送信先の利用目的双方を記載します(ガイドライン解説258頁)。
記載の方法については、例えば、「当社の商品やサービスの運用・工場、新商品や新サービスの企画、アンケート調査その他マーケティング分析のため」、「お客様にお勧めする商品・サービス・コンテンツ等のご案内のため」、「お客様に適した当社及び他社の広告の表示・配信のため」といった程度で問題ないとされています。ただし、利用者に関する情報から利用者の行動・関心等を分析する場合は、どのような取り扱いが行われているかを利用者が予測・想定できる粒度で記載目的を記載しなければならず、今後、FAQ等を公表し、明確化することを検討しているとのコメントが総務省から出されています。(ガイドラインに関するパブリックコメント54、55頁)。

 なお、総務省のQ&Aにおいても具体的な解説がされていますので、合わせて参照いただければと思います。

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/gaibusoushin_kiritsu_00002.html

3 設問の企業のウェブサイトでのクッキーポリシーの要否について

設問の企業のウェブサイトは、コーポレートサイトとニュース映像の配信サイト双方を兼ねています。このような場合、自社紹介のページについてクッキーポリシーは不要ですが、ニュース映像の配信のページにはクッキーポリシーが必要ということになります。
しかしながら、複数のウェブページが一体となって自社ウェブサイトを構成するのが通常ですから、わざわざ自社紹介のページとニュース映像の配信ページを分断してクッキーポリシーの表示、公表を行うことは現実的でない場合が多いと思われます。結局、このような場合は、自社のウェブサイト全体として一個のクッキーポリシーを作成、公表することになると考えられます。

4 まとめ

以上のとおり、改正電気通信事業法の適用対象は広範となるため、クッキーポリシーの作成、公表が必要となる企業のウェブサイトは相当数あると考えられます。自社のウェブサイトで使用しているクッキーモジュールを確認の上、上記の記載事項に沿ったクッキーポリシーを作成していただく必要があるかと思います。
このようなクッキーポリシーの作成についてご不安、ご不明な点がある場合は、お近くの弁護士等の専門家にご相談ください。